今回もダラダラとオイル・添加剤について
の考察をお届けします。
さて、今回は皆様御存知のPTFEの話をさせて頂きます。
高分子系潤滑剤の代表で当然現在でも改良が進んでいる成分で
様々な資料を見て調べている内に
長文化したので2部に分けさせて頂きます。
申し訳ありませんがお許し下さい。
因果関係が複雑に絡む内容の為何度も同じ記述が
重なる箇所が多くなりましたが御容赦下さい。
まず、PTFEとは何か?と辞書で調べると
テトラフルオロエチレンの重合によって得られるフッ素樹脂で、
粉末か水分散液として入手することができる。
化学薬品に対して極めて不活性で、熱安定度が高く、
摩擦係数が小さく殆ど全ての材料に付着しないという特徴がある。
名称はポリテトラフルオロエチレン、略号はPTFE。と有ります。
テフロンはPTFEの商標名です。(米国デュポン社の商標)
PTFEは特殊な環境
(光学レンズ近辺・宇宙空間・医療現場・超低温環境等)で
オイル・グリス等を使用出来ない環境下での潤滑に優れた効果を発揮します。
特にPTFEに代表される高分子系潤滑剤は僅かな発塵も問題になる
超精密機器製造現場や医療現場等のクリーン環境下 ※1
及び腐食性環境下等で優れた特性を発揮します。
※1
PTFE焼付け処理を施した軸受けを発塵性能比較試験でテストした際
MoS2(二硫化モリブデン)焼付け処理を施した軸受けより
3桁以上発塵が少ない結果が出ている。
以上の様な特殊環境での使用の他に
固体潤滑剤をオイルに混ぜて使用すると性能の向上を
計れると書籍にも書いてありますが
問題は使用環境に依って添加する物を選ぶ必要が有ります。
前回のメルマガでも御説明したとおり潤滑剤という物は
当たり前ですが作用する箇所に介在して初めて効果を現す訳で
優れた効能が有っても作用箇所に供給されなければ何の意味もありません
工業分野で固体潤滑剤を用いる時は前号で触れた特殊処理である
焼付け処理等を施す場合が多いです。
そもそも、市販の添加剤の様に含有している液体を混入するだけで
特殊加工処理の様な堅牢な被膜が形成出来れば、
特殊処理自体が不要なのですが現在の作業現場及び
資料等で固体潤滑剤の特性を調べる際には、特殊加工処理を施した
データが出てくるのが常です。
この点を踏まえてもやはり固体添加剤の特性を享受する為には
特殊加工が不可欠であり、データを取るにしても現場で使うにしても
下記の件がネックになります。
1
固体潤滑剤はオイルより比重が高く(オイルより重い)
油中に均一に分散させるのが非常に困難である。
2
1の理由に因り固体潤滑剤含有物(液状・粉体)を混入する方法では
有効成分が的確に作用部に供給されているか否かと言う点が不明瞭。
3
上記の理由から現場でも研究所でも不正確な物は採用する価値が無い。
と言う事になります。
早い話がオイルに混入する方法は、いい加減な方法でそんな方法は
誰も使わんという事ですね。強いて言えば手軽だと言う事でしょうか。
手軽とプラシーボ効果。添加剤業界に於ける伝家の宝刀です。
それしか無いのでは?と言う宝刀を馬鹿にした意見もチラホラ聞くので、
その偉大な顕現をお話ししましょう。
PTFE含有オイルはアメリカで70年代頃に発売され、当時は
PTFE樹脂の摩耗係数の突出した低さから大変注目されましたが
油道にスラッジとして堆積し潤滑不良を起こしてエンジンを焼き付かせた
事件や小型自家用機のエンジンに使用したオーナーが、潤滑不全に因り
飛行中に突然エンジンが停止し、不時着したという騒ぎも起こりました。
如何ですか? 一度抜けば走行中の車輌を問答無用で停止させ
遙か上空の飛行機も叩き落とす伝家の宝刀。
有益と見せかけて市場に拡散した処で一発喰らわせる痛快な手法。
まんまと騙されやがって馬鹿共め、これでも喰らえオラァ!!
と言う感じですかね?
ユーザーはエンジンがブッ壊れて大迷惑。
業者は一儲け出来る筈が事後処理に追われて大損害と
平等に不利益を被る点が実に素晴らしく
意図的に仕掛けられたのでは?と勘ぐりする程です。
そんな呪われた宝刀を振り回して、工場のラインがストップしたら
何千万円の損失を生み、データを取るのに適当なデータを取っても
自分の首を絞める羽目になるので賢明な人は誰も使わないと言う事です。
特殊加工が必要な点は介在箇所に固体添加剤を強固に保持させる為です。
強固に保持させる為に必要な特殊加工を省く訳ですから
混合するだけでは強固に保持出来ないと言い換えても良いでしょうね。
この手の添加剤の効能には殆ど『強固な保持』という言葉が
書いてありますが何と比べて強固なのでしょうね?
少なくとも特殊加工皮膜より強固、或いはそれと同程度
と言う事は絶対にありません。じゃあ何と比べてるの?となりますね。
科学的根拠など全く無いメーカー側の主観だと
話になりませんがどうなんでしょうね?
大体、この手の方法で強固な保持と謳う物は
個人ユーザーだけに的を絞った市販添加剤だけでは無いかと思います。
まぁ、大手企業の顧客では研究職に携わる方も当然居る訳で
そんな方々に適当な事を言えば吊し上げを喰らうのがオチです。
効能書きに『特殊加工皮膜より脆弱な皮膜になる事は当然だが
せめて実用レベルの皮膜である事を切に願う。』と書いてあれば
私共は、おぉ、正直だな。やっと添加剤市場も真面目になって。
と思うのですが、それを買う人は居ないでしょうね。
摩耗する作用面に偶然その添加剤が介在していれば
PTFE自体は優れた潤滑剤なので(適材適所と言う事で万能では無い)
その効果を果たす筈ですがそんな偶然に頼る訳にもいきません。
更に一番重要な点ですが固体潤滑剤という物は
総じてオイルより重く常に油中に分散状態で有る
という訳では無いので常時オイルに混じって各部に供給されて
作用部に介在すると言う事は出来ないのです。
第一、バ〜っと撒いただけで膜を形成する成分では無いと思いますが
その辺も納得出来ない点ですね。(平面ならまだしも垂直面では?)
まぁ、それはメーカーも重々承知でグダグダと理屈をつけて
ウチの製品は大丈夫です。と言っている訳ですが、じゃあ何で
未だに特殊加工が必要なのか?と言う疑問は払拭出来ません。
早い話、何の答えにもなっていないと言う事です。
簡単に剥がれる物を保持と言えるのか?
物質と物質を結びつける力を結合力と言います。
この結合力が強い程強力な皮膜が形成できるのですが
PTFEのような固体・粉体は物体に対してどのように結合するのか?
これは次号で詳しく御説明します。
また、その添加剤を用いる以前から既に油によって
潤滑が行われている訳で添加する前に既に金属表面に油膜が
形成されてしまっている点も見逃してはなりません。
油膜が形成されると問題が有るような
物言いですがその辺も次号で御説明させて頂きます。