今回もダラダラとオイル・添加剤について
の考察をお届けします。

2部に分けたにも関わらず無茶苦茶長くなりましたので
後編を更に2部に分けさせて戴きます。

さて、前号では PTFEはどのような場所で使われるのか?
固体添加剤の特性を活かすにはどうするのか?
適した用法を無視すればどうなるのか?
と言う話をさせて頂きました。

そして、固体添加剤を使用する前にすでにエンジンは
オイルによって潤滑されている訳で・・と言う括りでした。

流石にPTFEは著名な添加剤であり
皆さんの関心度も高く、読者の方から
確かに効果が認められたので眉唾では無い筈・
PTFEの効果は科学的に立証されて云々等。と言う意見を頂きました。

PTFEが優れた潤滑剤と言う事はデータでも示されており、
私はその点に異議を申した意識は無く、優れていると認めているが
その使い方が如何な物か?と言いたい訳ですが前号の内容では
PTFE=眉唾物。と解釈されても致し方無いかもしれませんね。

まぁその補足としてこの後編がある訳ですので御一読下さい。

まず、PTFE系添加剤を入れる前、厳密に言えば
車が貴方の手に渡る前から動作チェック等で
エンジンは駆動しており、その時からオイルによって
潤滑されている訳ですから当然金属面には油膜が形成されています。

既に形成されている油膜を押しのけて、PTFE粒子を
金属表面に保持させるのはなかなか難しい話です。

固体添加剤は強固に保持させる為には
特殊加工が必要で、その場合にも母材に汚れ等が
付着している場合は除去しないと処理ができません。
油でベトベトでは話になりません。

金属表面に油膜が存在する以上、
粉体樹脂が金属に対して親和性を保有しても
金属面に接触しない為に保持する事は出来ません。
さらに粉体樹脂よりオイルの方が金属に対して親和性が
高い(後述する結合力の違い)事もありそれを阻害する
(結合力を弱める)と言うのはマイナス作用です。
保持と言うより付着というのが相応しいかと思いますが
日本語の言い回しは便利ですね。

そして上部から常にオイルが流れ落ちてきて各部を
潤滑させるのですから一緒に流れ落ちる可能性が高いと言う事です。

無論、流れ落ちを阻止する為に色々と対策を講じる訳ですが
そこまで無理して使う必要があるのか?代替成分は幾らでもあるぞ?
それにPTFEは安価な成分なのに含有製品の価格は高過ぎだ。
お前ら幾らボッタくる気だ?殿様商売やりやがって。
と言うのが私の率直な意見です。

しかし、例え流れ落ちてもまた吸い上げられて各部に供給されるのでは?
と考えられるかもしれませんがこれは油中に均一に分散されていると言うのが
前提になり、粒体物質はどんなに微細化しても均一に分散されるというのは
残念ながらあり得ない訳で、確実な効果を求めるのであれば
やはり最初から作用部に焼き付ける等の処置が必要になり、
エンジン内にもピストンスカート部のように
二硫化モリブデン・PTFE・グラファイト等の
複合焼き付け処理を施している箇所が存在します。

固体物質以外の成分はオイルに速やかに分散する成分で構成されている点と
共有結合・イオン結合が可能で強固な結合を実現出来る訳です。
上記の結合はエステル系オイル等が有名ですが普通のオイルでも望めます。
(当然、固体添加剤以外の添加剤もこの結合を実現可能です)

共有結合  Wikipedia出典
(Covalent bond、等極結合[Homopolar bond]とも言う):
原子同士で互いの電子を共有することによって生じる結合。
結合の強さは強く、共有結合によって形成される結晶が共有結合結晶である。

イオン結合 Wikipedia出典
(Ionic bond):NaCl(塩化ナトリウム、いわゆる塩、岩塩)で代表される、陽イオン(Na+)
陰イオン(Cl-)同士の静電引力による結合。結合は強い。
この結合によって形成される結晶がイオン結晶である。

PTFEは悲しいかな、高分子ですので上記のような結合は絶対に望めません。

PTFEには前々号でお話しした固体添加剤の項で出てきた、
ファン・デル・ワールス結合しかない為、
他物質との結合が非常に弱くどんなに微細化しても
分子の繋がりを破壊しなければ
共有・イオン結合は起きない訳で、当然分子の繋がりを破壊すれば
PTFEでは無く別の物質になります。

ファンデルワールス力(van del Waals force):
原子、分子間などに働く力の一つ。その力(分子間力とも言う)は非常に弱い。
この力によって出来る結合をファン・デル・ワールス結合と言う。(Wikipedia出典)


さて、この続きは後編その2でお伝えします。