今回は塩素についてお話しさせて頂きます。

塩素系添加剤と言う言葉は皆様も耳にした事があると思います。
塩素=腐食・有害と言うイメージばかり先行しておりますが
全く持ってその通りです。

塩素系添加剤の問題を少し詳しく説明しますと

1 焼却時に酸性ガスやダイオキシンを発生させる。
2 塩素を含有した廃油はリサイクルが難しい。
3 プラスチックやゴムに対する攻撃性が高い。
と言う事です。

まぁ、それでも未だに採用しているのは
塩素系添加剤は優れた極圧性を発揮することに加え、
低コストで製造可能な事が大きな要因です。

その作用原理は
金属表面に化学反応により剪断強さ(下記に解説)の低い
固体潤滑膜を作り潤滑作用を示します。

(用語仮説)剪断
せん断(剪断)とは、四角いものを平行四辺形に
変形させる力のかけ方のこと。
(Wikipedia出典)
以前のメルマガにも出てきましたが、縛っていない新聞紙の束の上で
ピョンピョンと跳ねるとズル〜っとずれる現象が起こりますね。
これがイメージ的には解り易いと思います。
上から荷重をかけた際にグニャッと歪んで力を逃がす訳で
この剪断強さが低いと簡単にグニャッと成る訳です。

さて、問題点の考察です。

1・2の問題
我が国での廃油のリサイクル方法は廃油を
燃料として燃焼しその熱エネルギーを活用する
サーマルリサイクルが主流ですが
塩素を含有する廃油を焼却処分すると
腐食性のある塩化水素ガスが発生し焼却炉の損傷や
酸性雨の原因になります。
また、燃焼性能が不十分な焼却炉で処理すると
毒性が強いダイオキシンが発生する可能性があります。
この為、塩素を含有した廃油は成分の特性上
リサイクルが難しく適正に処分する必要が有ります。

3の問題
塩素系添加剤の中には塩素化パラフィンのように
プラスチックの可塑剤(下記に解説)として使われる物があります。
その為、プラスチックやゴムに対する影響が大きく
割れや膨潤(下記に解説)の問題を生じます。
これはオイル添加剤にとっては致命的です。
車輌にはプラスチック・ゴムはあらゆる処で多用されており
意図しない処に作用して強度を低下させたり亀裂が入ったり
すれば当然、性能に多大な影響を及ぼします。


(用語解説)可塑剤
可塑とは、「柔らかくすることができる」という意味である。
合成樹脂に加えて柔らかくする薬品類を可塑剤と云う。
ポリ塩化ビニル樹脂に対して用いることが代表的である。
フタル酸エステル類が代表的であり、フタル酸ジブチル
(Dibutyl-Phthalate 略してDBP)や
フタル酸ジオクチル(Dioctyl-Phthalate 略してDOP)
などが生産量が多い。 (Wikipedia出典)

(用語解説)膨潤
水分を含んで膨れること。
特に高分子物質が溶媒を吸収し体積が膨張すること。膨化。

1. 2の問題に戻りますが
適正処分=普通じゃ出来ない処理法=通常より余計に金が掛かる。
と言う訳です。
オマケにいちいち分別収集も大変です。
(塩素は反応性が高く混ぜると他の物も影響を受ける)
製造時は安くても廃棄で金が掛かれば結局一緒ですね。
まぁ、ユーザーは廃棄時に自分で処理する事が殆ど無いと
思われますしあまり関係ない話ですかね。

しかし、企業レベルになると話が変わり
最近は環境に対する意識も考慮せねばならない為
車のオイルよりも桁違いに消費量の多い
産業関連業務での潤滑油・切削油等は
非塩素化の動きが顕著になっております。
それは当然車のオイル業界にも影響を及ぼしており
現在では環境問題に対処して
非塩素系オイル・添加剤も発売されております。

既に塩素系添加剤の代替成分の開発は完了しており
安い・効果も有るけど車にも環境にも有害。と言う物より
安い・効果もあって車にも環境にも無害。と言う都合の良い物が
代替品として出来ている以上
わざわざ過去の遺物に執着する必要は無いと言えます。

ただ、その代替品は何か?と言う具体的なことになると
金儲けのネタですから当然企業は秘密にします。
未だに塩素系であると認めざるを得ない製品を取り扱っている処は
時代錯誤でありそのメーカーは非塩素系製品を
開発する技術力が無いと露呈しているような物です。

時流に乗る事が出来ない企業は淘汰されて然るべき物です。
ユーザーまで一緒に同行する必要はありません。