皆様Lostwordの石原です。
今回もダラダラとオイル・添加剤について
の考察をお届けします。

さて、前回で今回の話は
『使って良い添加剤と
使ってはいけない添加剤』と言う
話をするとお伝えしましたが
使っていけない物は眉唾物で
使って良いのが優れた添加剤だろ?
と言う素晴らしく的確な指摘を読者の方より
頂いたので『オイル添加剤を使って良い所と
好ましくない所』と改変させて頂きます。

今回は、後入れ添加剤を添加する事が
好ましくない箇所として
AT機構とCVT機構を取り上げさせて頂きます。

尚、物凄く長くなりましたので

AT 前編
AT 後編
とさせて頂きます。

CVTの件ですが
この機構自体が現在進行形で著しく進化する
可能性を秘めているので、追記の連続で
もしかすると今回のAT編の様に
2部に分けて配信するかも知れません。

では、本題に入ります。

弊社の製品を購入されたお客様から
度々、エンジンオイルだけではなく
デフオイル・ATF・CVTFに
添加出来る製品は無いですか?
と言うメールを頂く事が有ります。

デフはともかくAT、及び
CVT機構は潤滑技術の粋を
集結して造られている。と
言っても過言ではありません。

オイル添加剤に要求される要項で
重要な点が、その製品が使う箇所に対して
攻撃性が無い・或いは低いと言う点・
その添加剤が行う作用について科学的な裏付けが
有るという点です。

特に、昨今ではCVTが今まで
MTかATか?という二者択一から
新たな選択肢と言う観点の他に
効率の良いギア選択が可能で有る事から
省燃費化を計れるとして
各メーカーがCVTに力を注いでいるのは
御承知だと思います。
(CVT機構自体が結構な動力を使うのが難)

ユーザー側としては『潤滑技術の粋を集めた箇所』
と聞くと、其処に凄い効能を持つ添加剤を入れると
現状より更に性能を伸ばせるのでは?
と思われるのか、只単に、エンジンの他に添加出来る
箇所は無いのか?と興味本位な要求を満たす為に
添加出来る箇所を探しているのか、私宛に来る
『エンジン以外で添加出来る箇所は無いですか?』
と言うメールの内容では判断に迷う所ですが
どちらにせよ、ATFやCVTFに後入れ添加剤を
投入するのは望ましい事では無いと思われます。

その理由は、ATF・CVTFに於いては
1つの成分で複数の性能を果たす必要が出てくるからです。

これでは何の事やらサッパリですが
例を挙げますと、以前メルマガで紹介した
ZnDTPと言う成分を覚えておられるでしょうか?

摩耗防止・劣化防止・腐食防止・と複合的な効能を持つ
成分ですが、ベルトCVTでは、ベルトとプーリー間の
金属同士の摩擦係数向上にも使われます。

ATでもエンジンオイルで分散剤と言えば
名を以て体を表す様に分散機能を担えば良いのですが
ATFでは摩擦調整剤としても使われます。

このように、AT・CVT等の自動変速機に於いては
単純に摩擦を減らせば良い。と言う観念だけではなく
摩擦の調整という事であらゆる手段が講じられています。

と、言う訳で適当に良さそうな物を突っ込んで結果オーライ。
と言う様な簡単な物では無いと言う事をまず理解して下さい。

素人考えが通用する程単純な物では無い。と
エセ専門家気取りで切り捨てても何の説明にもならないので
順を追って説明させて頂きます。


まず、90年代に入ってAT機構にロックアップ機構と言う
機構の装着が一般化しました。
ATはトルクコンバータという動力伝達装置を使う訳ですが
このトルクコンバータはオイル(ATF)を使って
間接的に動力を伝達するのでどうしても伝達ロスが生じます。

トルクコンバータをわかりやすく解説すると以下の様な感じです。

滝のある川に水車を設置するとします。
滝に直接水車を当てるのではなく
少し滝から離れた下流に水車を設置します。

これは停止状態の水車を直接滝に当てると滝の水流が
強すぎてスムーズに回転しない為です。

当然水流を受けて水車は回り出す訳ですが
その水の流れがエンジンから発生する動力で
水がATFで、水車が変速ギアという事になります。

しかし、MT車の様に物理的に接触させて回転させるのが
一番ロスが少ないという明快な答えがある訳で
それならばトルクコンバータを使わずに
変速ギアに直結させれば良い。と言う発想で
ロックアップ機構が誕生しました。

しかし、停車時からの発進等でいきなり
トルクコンバータを使わずにギアに直結させれば
上記の例の様に激しい振動・異音を伴う
非常にぎこちない動きになります。

これでは全く話にならないので
高速領域等の限定した領域でのみロックアップ機構が
使われていましたが
最近の技術の進歩により
クラッチを微妙に滑らせて振動を吸収することで
低速域からロックアップクラッチを作動させる事が
可能になりました。
これをスリップ制御ロックアップクラッチと言います。

これは前述した様に90年代から採用された技術で
それ以前のATの機構とは異なる制御方式です。

この『微妙にクラッチを滑らせて・・』と言う
処が非常に重要な点で、この微妙な摩擦を調節しているのが
ATFに含まれる各種添加剤です。

これに後入れ添加剤を投入すると当然、
後入れ添加剤に含まれている成分が
その微妙な作用に影響を及ぼします。

微妙な作用に変調が起こり
良い方に転がれば結構ですが
悪い方に転がれば車の動力伝達の要となる
機構だけに事は深刻です。

さらに、その微妙な摩擦を調節している成分ですが
この成分自体の性質の問題もあります。

次号では、その微妙な摩擦を調節している
成分の性質、及び、
AT機構に添加剤を投入する必要性について
お話しさせて頂きます。