皆様Lostwordの石原です。
今回もダラダラとオイル・添加剤について
の考察をお届けします。

さて、前号では
AT・CVTに使われるフルードは
一つの成分で複数の役割を
果たす物が多く、両機構が摩擦の低減では無く
摩擦の調整という事に重点を置いている
と言う内容で
それを踏まえてユーザーが独断で両機構に
オイル添加剤を入れるのは好ましくない。と言う話で
一例としてAT機構のロックアップ機構を説明しました。

さて、件のロックアップ機構ですが
これにより従来のATより10・15モードで
燃費を約7%向上させる事に成功しています。

燃費が云々と常日頃から神経を尖らせている方々には
7%と言うのは大きな数字では無いでしょうか?

用語解説 10・15モード

10・15モードとは、10の走行パターンを想定したテストを3回行った後、
15の走行パターンのテストを1回加えたテストの結果による燃費の表示方法。
10モードはやや市街地に近い走行パターン。
15モードは郊外で条件の良い道路を走ったときを想定したパターン。

しかし、この燃費モードの測定は実走ではなく、
テスターの上でタイヤを回転させながら行う為
あくまでシミュレート的な数値である。


さて、此処で注意したい点ですが
スリップ制御ロックアップクラッチに
不適切なATFを使用するとロックアップ作動時に
不快な異音や、車が故障したのか?と思う様な
振動を発生させる原因になります。

異音・振動発生を抑える為には
動力伝達の差が大きくなるに従い
摩擦係数を大きくする必要があります。

動力伝達の差が小さい時は摩擦係数が小さく
差が増えるとそれに比例して摩擦係数が上昇するオイル。
これが理想的な訳です。

その理想に近づける為に開発側が
複数の摩擦調整剤・分散剤の量や種類を吟味して
調整を行っている訳です。

開発側がせっかく吟味して理想に近い形で
ATFを調合したのに後から適当に成分を投入する事は
その後の性能が全く未知数になると言う事です。

この辺りはATFがエンジンオイルと違い
しっかりバランスを考慮して造られていると
言っても良いでしょうね。
(それだけAT機構がデリケートと言う事)


ユーザーの独断で市販製品を添加して
それが優れた結果を生めば良いですが
クラッチが滑るようになったり
異音の原因・または
ガッコン・ズッコン、と実用に耐えない
振動を発生させる原因になったりする恐れもあります。

更に、ATFに含有される
摩擦調整剤・分散剤という物は、分子量が小さい
有機酸性化合物や有機塩基性化合物が用いられる為
AT機構に使用されているゴム・ナイロン等への
攻撃性も懸念されます。

当然、ATFはその点も考慮して上記成分の量を
考慮して造られている訳ですが
後から上記の成分を追加補充するという形になると
当然、各部に影響を及ぼす事になります。

市販製品の成分表示を見て
上記の成分に該当するとユーザーが判断出来れば
まだ良いですが市販の製品に摩擦調整剤として○○を○%含有
分散剤として○○を○%含有。
と言う表記は当然有りません。

何となく良さそうだし入れてみよう。壊れる事は無いだろう。
と言う憶測が通用する単純な機構ではありませんし
エンジンとは比較出来ない程デリケートなAT機構に
得体の知れない物を投入すると
AT機構の不具合が出た時に後悔する事になります。

AT機構は僅かな異物混入でも調子が変動し
不都合が生じて修理となると、
『修理より同程度の車を探すほうが・・』
と言う程、高額になる事も珍しい事ではありません


以上の点に加え、オイル添加剤を投入する
主な目的の一つに『各部の保護』という物があります。

しかし、AT機構は動力を発生させるエンジンと違い、
エンジンに比べて負荷が低く、各部の保護に関しては
現状のATFで十分対応可能です。

さらにもう一つオイル添加剤を投入する目的として
『オイル寿命の延長』があります。

しかし、ATF自体メーカーの基準では
10万km以上交換不要を謳っています。

その根拠はAT機構がエンジンと違い、内燃機関では無い為に
燃焼に因る生成物及び燃料等、劣化促進物質や異物の混入が
エンジン油とは比較出来ない程少ない為です。

まぁ10万kmも本当に性能を維持できるか?と言う
点はさておき、少なくとも数万kmは無交換でOK。
と言う製品の寿命を更に延ばした処で
せいぜいその車を所持している間に1〜2回替えれば
エンジンやAT以外の部分が寿命を達成する程になりますし
前述した問題を考慮すると、危険を冒して
添加しても目を見張るような経済的効果があるのか?
と言う事になり、これもあまり効果を期待できません。


此処まで書いて、恐らく大多数の読者の方に
ATFに後から独断で添加剤を投入する事が
どれほど愚かしい事かお解りになられたかと思います。

さて、次号ではCVTについてお話しさせて戴きます。