前号ではフラッシングに対する誤解とその誤解の原因が
主に単一成分で構成されている製品であると述べました。
そして、それを回避する為には複合成分で構成されている
製品を選ぶ必要があるが成分表示の義務がない為
どれが複合成分の製品か解らないという点と
手当たり次第に効果がある物を混ぜれば
良い物が出来ると言う訳では無い
と言う事を述べさせて頂きました。

成分表示の件は以前お話ししたので弊社サイトの
オイル添加剤四方山話を御参照下さい。

問題の効果がある物を手当たり次第に・・と言う件ですが
この問題は現在でも技術者が日夜研究を重ねる
非常に奥の深い問題です。

文章量の都合で今回はサラリと触れるに留めますが
モリブデンのように油中に共存する他の成分によって
効能が左右され、その成分如何によっては
モリブデンを含有していても全く効果が出ない場合や
最低限の効果しか出なかったりする場合もあります。

これはモリブデンの量に関係無く共存している添加剤を選別しないと
幾ら多量に入れても効果が出ないと言う例です。

文章量の都合で次号以降に譲りますが
添加剤の成分の中には作用を及ぼす際に他の成分が必要で
それが無いとサッパリ効果を発揮しない物が有るという
事を覚えておいて下さい。

油中の他の成分に影響を受け効能が大きく
左右されるのが添加剤の奥深いところです。
これは単一成分で出来ている製品の問題点でもあります。

話の流れから解ると思いますが幾ら有益な成分を含有しても
他の因子により効能を大きく左右される製品など
本当に納得出来る効果を万人が享受出来るでしょうか?

生物に使うのではなく、機械に使う物であれば
誰が使っても同じ効果。というのは市場製品において
基本中の基本で、その件については今更議論するまでもありません。

それが、人によって効果が違うと言うのは話になりません。

フラッシング剤本来の目的である洗浄だけを重視するなら
灯油かそれに準ずる成分で十分目的を果たせますが
潤滑不良による故障を招く危険性が有ります。

単一成分の製品は信用性に乏しいと言わざるを得ない。
しかし、成分表示のある製品は少ない。

結局、暗中模索でリスクを承知で行わなければならない。
オイル漏れを起こす、パッキンが冒される、
圧縮漏れを起こすという大変な噂も流れ
そんな危険を冒してまでフラッシングする意義が有るのか?
君子危うきに近寄らず。になると思います。

しかし私の今まで業務経験上でも
潤滑に関する専門的資料を観ても
フラッシングは害悪を及ぼす。
と言う記述を見つけられませんでした。

油道に限らず、溝でも水路でも、流体を流す経路で
堆積物によって正常な流量が阻害されれば
問題を起こす事は言うまでもありません。

溝と、エンジン内の油道を同一に考えるのは
非常に強引ですが意図しない処で堆積物が溜まり
流量を変化されると他の箇所に影響が出るのは同じです。

異常事態が発生している箇所を放置して
何とか性能向上を・・と躍起になるのは本末転倒です。

これは捻挫して不調を訴えているランナーに
麻酔や筋肉増強剤を投薬して強引に走らせるのと同じで
そんな半病人がベストのポテンシャルなど
出せる訳もなく必ず異常を及ぼします。

人でも機械でも不調を放置して強引に動かすと
必ず後のトラブルの元凶になります。

車で性能向上を目指すのならば、最初に行う事は
車の状態を正常な状態に戻す事で
その策の1つとしてフラッシングは非常に有効です。

しかし、個人的思惑が多分に入ったwebサイト等では
フラッシングするとパッキンが冒されるとか
隙間に堆積していたスラッジが除去されて生じた隙間から
オイル漏れが起きるとか、圧縮が抜けると言う
よく聞く文句が踊っている訳ですが、
パッキンが冒され云々という理由はフラッシングが
問題では無く、フラッシング剤が問題であると言えるでしょう。

使用したフラッシング剤にパッキンを冒す成分が含有されており、
それが悪影響を及ぼした訳で
フラッシングでパッキンが冒されたと言うのは結論的には
合っていますがフラッシング剤全てにパッキンを冒す
成分が入っている訳ではありません。

エンジン内を綺麗にする為にパッキンを多少冒すのは仕方無い。
というのは余りに横暴な考え方で、多少も何も
部品を冒すなど有っては成らない事です。

粗悪なフラッシング剤でパッキンが冒されれば
当然オイル漏れが起こるのですが
ジャージャーとオイルが勢いよく漏れ出せば誰でも解りますが
ポタリポタリと滴る程度では車の下を見ないと解りません。

更に、通勤に使っているのであれば朝、車に乗って
夜暗くなって帰宅するので、路面に残る
オイル漏れの跡の確認も出来ませんし
第一、 自分の車がオイル漏れを起こしているかもしれない。
と言う観念を抱く人がどれ程いるでしょうか?

自分の車にそんな事が起こる訳無い。と言う観念で居る以上
細かな異常に気付く事はまずありません。

そして、何より危惧する点が、最近の車のブラックボックス化により
殆どのユーザーが車に関して無頓着になりつつある点です。

定期的にオイル交換しているからオイルの事なんて
普段気にした事無いよ。今更、言われなくとも
標準以上のグレードのオイル入れているから問題ないよ。
と言う方が余りにも多いのです。

オイル漏れが起これば、標準以上もクソも無く
確実にオイルは漏れ続け残量不足で潤滑不良を招き、
いきなり焼け付き走行不能。
と言う事に相成る事も別に不思議ではありません。

もう一つの問題でフラッシング否定派が
まるでその現状を見たかのように、さも当然のように語っている
堆積物が隙間を埋めて圧縮を維持しているとか
パテの役目を果たして隙間を埋める等と言う
都合の良い記載も私が調べる限り資料には有りませんでした。

この、堆積物というのは往々にしてスラッジの事を指しています。
しかし、スラッジとはヌルヌルのヘドロ状だったり
練り消しゴムのように粘着性が高いガム性状で
どう考えてもスラッジに圧縮を維持する程の
剛性というか強度という物も持ち合わせておらず
油道に堆積して、流量を減らす・他の物質の劣化を促進させる・
その粘性でピストンリングを固着させて
正常な動作を妨げリングとシリンダ間に隙間を生じさせ
圧縮抜けを誘発させる事はありますが
隙間に堆積して圧縮抜けを防止する等という事はありません。

百歩譲って隙間を埋めているとしても、そんな物が長期間
維持出来る訳も無く、気休め程度の話でしかありません。

フラッシング否定派が何処を誤解したのか解りませんが
スラッジなどは百害あって一利なしと言う物に違い有りません。

現在でも旧車・外車への施行を拒んだり、
使用出来ない車種があったり
短時間(10〜20分)以上施行しては駄目とか、
添加したまま絶対に走行するな。等やたらと
条件指定をするフラッシングは全て過去の遺物です。

パッキンに対する攻撃性が有る為、旧車・外車には使用出来ない。
極めて短時間で排出しなければ悪影響を及ぼす可能性がある。
これは全て技術力・開発力が稚拙な製造側の怠惰が許したゴミ製品です。

パッキン・その他機関に対する攻撃性を問題無いレベルまで
移行させれば即解決。長時間使用しても全く問題無く、
異なる性能を発揮する第二段階へ推移する。
保護作用を高くすれば添加中にそのまま走っても全く問題無し。
文にすると、何とも簡単そうな印象を受けますがハッキリ言って難題です。
しかし実際弊社の製品では実現可能であり、机上の空論ではありません。

前号で申した整備士がフラッシングに対して良い印象を持っていない
場合が多いと言う点ですが整備士は整備のプロで潤滑のプロでは無い為、
潤滑の事を聞いて間違った回答をしても致し方有りません。
更に、聞く方はプロの意見として聞く訳ですから
いい加減な事を言って損害を与える事になると問題です。

潤滑の事は潤滑のプロに聞けばいいのですがそんなプロは
その辺には居ませんし研究室まで入って聞く事も出来ません。
自分で潤滑関連の本を読んで勉強するのが一番良いのですが
金を出す身なのに逐一下調べをするのも馬鹿らしい話です。

普通の人は『ゴチャゴチャした理論は不要。無害で効けばそれが一番!』
と言う思慮が当然有る訳ですから我々もそれに応えた製品を用意して
『まぁ、使った後で苦情でも何でも伺いますよ』と言うのが一番
簡単で解り易いのですが、そんな事を言っても誰も買う人は居らず
化学的な裏付けを用意して、ようやく売れる訳です。

車は物理現象に基づき動作する機械です。
宇宙の果てに答えがあるような不可解な理論や
魔法のような都合の良い解釈は全て忘れて下さい。

そう認知する事で確かな製品・怪しい製品を
見極める事が出来ると思います。