さて、前号ではえらく読後感の悪い筆運びをしました。

話題を変えて前号のお約束通り
技術革新の恩恵である、これぞエコロジーという物をお話しさせて戴きます。

エコロジーとは自然環境保護に他ならないのですが
馬鹿正直にそれを行う事は人間の行動を著しく制限する
苦い思いを強いる事だと言う事は前回お話ししました。

文明の恩恵を存分に享受して繁栄を謳歌しているのに
いきなりその活動を著しく制限されては不自由極まりないですね。

しかし、今のままでは手痛いシッペ返しが来るのは解りきっている。
さてどうしよう。生活水準は現状維持で何とか痛い思いを回避する方法・・。
まるで借金苦に喘ぐ人が考えそうな都合の良い回避策ですが
それを何とか実践してしまう処が人間の素晴らしさと図々しさです。

皆さんも車やバイク等のエンジンに依る動力で動く物を所有して居られる
と思いますが、少ない燃料で長距離走る車を作る為にはどうすれば良いでしょうか?

まず、簡単に考えて少ない燃料で沢山走らせる為には
燃料の燃焼効率を上げて、一度の爆発で大量のエネルギーを得れば良い訳です。
得れば良いと簡単に言いましたが、簡単に出来れば苦労はありません。

しかし、難しいと言って放置していては何の対策にも為らないし
他人が遣らない事を成し得て世間に認められると莫大な利益を上げる事が出来ます。
これに目を付けて各自動車メーカーは日々研究を行っている訳です。

希薄燃焼エンジン等の低燃費エンジンの開発や新しい動力伝達方式、
車体重量の軽量化等挙げればキリが有りません。

少ない燃料で多量のエネルギーを獲るのは非常に難しく
少ない燃料では相応のエネルギーしか取り出せないのが現状です。
これは燃料を如何に完全燃焼させるのが難しいかという事ですね。
まして、車の場合、短期間だけ理想的な燃焼をすれば良いという物ではなく
エンジン内も使えば使う程、刻々と環境が変化する為
継続して長期間理想的な燃焼状態を保つ等、夢物語と言えます。

しかし、夢もヘチマも無い!実現しなければライバル他社に
シェアを喰われるだけ。と言う現実もあり、各社とも尻を叩かれながら
開発を続ける訳で、その結果として技術が進歩していくのです。

更に、何処のメーカーでも、売れる物を作るという大前提で
構想を練っている訳ですので
世間の動向を大きく無視した無茶な構想を建てる事はありません。

さしずめ、昨今なら低燃費・低排出云々と言った環境問題を考慮した物を
投入するのが普通で、貪欲に燃料を消費するクソ重たい車体の
モンスターマシンと言った今の時流にマッチしない物を主力車輌として
売り込もうとしても、なかなか売り易いと言える物ではありません。

そうなると、各社とも目指す方向性が同じという事になり
必然的にエンジンや車体の構想も似通った物に為らざるを得なくなります。

そうなると、今度は、他社に先駆けて市場に発表した物が
今後のイニシアチブを取る事になります。

他社に先行して発表出来れば宣伝効果は抜群で
市販車で初めて搭載した○○・・。と言うくだりが付けられる訳です。
これは大きなメリットですが先駆者とは良い事ばかりではありません。

三菱が希薄燃焼エンジンとして先駆けてGDIエンジンを出した当初は
兎に角アクセルワークに過敏と言える程、神経質にならないと普通のエンジンより
燃費が悪くなり、ストレスが堪って仕方ないし走っていて面白くないとか
走行距離に比例してトラブルも増えるとか色々な問題を抱えてきました。

おまけにAT車なのに高速道路の料金所等でエンジンが低回転域に移行すると
回転が不安定になったり、最悪エンストしてしまうと言う話もありました。

料金所でプッスンとなったらドライバーは恥ずかしい物です。
しかも自分の落ち度では無く、AT車で勝手にエンストすると為れば、
なんだこの車は?クソったれ。と為る訳です。

主な原因は、ご存知の通り、GDIエンジンなどの直噴エンジンは、
筒内に直接ガソリンを噴射することによって従来のエンジンでは不可能だった
超希薄燃焼を成し得た訳ですが、逆に燃費を稼げる薄いガソリンで走るほど
シリンダー内にカーボンが大量に発生しまう問題を抱えています。
そのため従来のエンジンよりも汚れ易く、シリンダー内に堆積したススやカーボンが
噴射されたガソリンを一旦吸収し、その後に気化すると言う事になり
結果的に一拍子遅れる事になり燃焼のタイミングが、ずれてしまいます。
こうして理想的なサイクルが崩れる事により益々エンジン内が汚れてしまい
燃費を悪化させてしまうトラブルが多々あります。
以上の理由から直噴エンジンは走行距離が増えるほど燃費悪化の傾向になります。
これを防ぐ為にはシリンダ内を極力クリーンに保つ必要がある訳です。

しかし、エンジンを定期的に開けて掃除する等非現実的で一番効率的な
方法は燃料添加剤による内部清浄が現状で一番効果があります。

しかし、メーカー側は、このエンジンは添加剤が無ければ本来の性能を発揮し得ない。
等と認めると他社との販売合戦を重視する余り、欠陥品を市場に投入した。
と言う意味で評価されるのを恐れて頑なにその認識を否定しています。

この辺が先駆者の宿命で後発のメーカーはそれを反面教師にして
美味しい処を持って行ったと言う経緯があります。

更に、只でさえ、汚れに敏感な超希薄燃焼エンジンですが
昨今の排ガス対策等でEGR(排ガス再循環)等が組み込まれ
益々汚れやすくなっています。

EGRとは排気中の黒煙や硫黄酸化物を再度エンジン内部に送り
燃焼させてNOxの減少を図る装置です。

先程も、燃料添加剤が大きく性能向上に貢献すると書いたのですが
このEGRが燃料添加剤の選別に関して
話を複雑にする要因でもあります。

この続きは次号でお話しします。