さて、前号まで小難しい話をして参りまして
皆様の中でも適当に流し読みや読み飛ばした方が
大勢居られるかと思います。

まぁ、前号までの話で一体何が言いたいのか?と言いますと
表面処理としてメーカーが施す加工の紹介と用いられる
固体潤滑剤の真価とその用法の難しさを説明したかった訳です。

そこで、非常に良いタイミングで読者の方より
車の慣らし運転は必要か否か?と言う質問を頂きました。

ですので、今回は慣らし運転についてお話しさせて頂きます。

結論から言いますと車の寿命を延ばす目的の慣らし運転は不要です。

いきなり、キッパリと言い放ちましたが現在の車は
多少の事で壊れるようなヤワな設計で製造されておりませんし
実際問題として、営業車等になりますと、当然納車日から
今まで使っていた車と同じペースで使えないと話になりません。

乗り換える時、旧車輌に満載していた荷物を納入したばかりの
新車に全て移し替えて、積載量ギリギリまで荷物を積んで
華々しいデビューを飾る事も日常茶飯事です。
勿論、坂道では荷物を積んでいる分アクセルを踏まないと
上らないので、この時点で慣らしもヘチマもありません。

しかし、15万km以上走破する事など当たり前。
オイル交換等の管理も好い加減なのが当たり前。
クソ安いオイルや業者任せでオイルの品質に無頓着なのも当たり前。

こんな三重苦でも問題無く稼働している車が殆どです。

第一、会社の車に慣らしもクソもあるか!馬鹿らしい。と言うのが
運転する方の本音でしょう。
慣らしが必要だと言われる理由は
末永く乗りたいというのが大きな理由です。

しかし、今挙げたように、三重苦を強いられている営業車でも
15万km以上走るのが普通です。


この記事を書く際にネットで色々調べましたが
F1等では未だに慣らし運転をしているのだから市販車でも
慣らしが必要だと言っている自動車雑誌記者の方の記載がありました。
しかしF1は非常にシビアな勝負の世界で、勝負の世界ではベストを尽くすのが
常識です。有利になる可能性が有る事は全て実行する。と言うのが
基本中の基本になります。

しかし市販車とレース車輌では設計段階から使用状況に至るまで
全てに於いて根本的に違います。
その点を無視して、レース車輌でも行う事だから市販車でも行うべきだ
という物言いは如何な物かと思いました。

そして、忘れてはならない事が新車時に比べて性能が低下した。
と言う判断を下す人間の感覚が余りにも
いい加減でお粗末極まりないと言う事を忘れてはなりません。

万が一、慣らしをせずに車を走り回らせて、何らかの不具合が出たとしましょう。

その場合、当然購入した所にその旨を伝える訳ですが、その時に
慣らしを怠った貴方が悪いので、貴方の責任です。そんな事で我々に
文句を言われても我々は関知しませんよ。と言われる事は絶対にありません。

説明書を読んで、慣らし運転について詳細が書かれていない場合
その車は慣らしが不要だと解釈しても問題有りません。

コレが意味する事は、慣らしをしなくても大丈夫だとメーカーが
公言している事に他なりません。必要なら必ず記載されます。

慣らしは不要で間違いない。と公言しているので遠慮無く乗り回して
何らかの問題が発生すれば、慣らしが要るのなら最初から説明書に書けよ。
そうしないと解らんだろうが!と怒鳴りつければ良いのです。

勿論、慣らし運転が必要だという方が居られるのは承知していますし
別に慣らしが悪いと言っている訳でもありません。

新しい車に乗って以前の車と車種・年式が近似している場合を除いて
車種毎に勝手が違うのは当然ですから以前の車と同じ感覚で
乗り回すと思わぬ事故を起こす可能性も否定出来ません。

その為に、慣らしとは車に自分が慣れる為に慎重に乗る事だ。
と言う方も居られますし、この意見には賛同出来ます。

慣れない車で他人を跳ね飛ばして、警察に捕まって開口一番
今までの車と勝手が違ったから初動が遅れた。
今までの車なら問題なく事故を避ける事が出来た。
だから車が悪くて私は悪くない。と宣った所で呆れられるのが関の山です。

ですので、新車や乗り始めたばかりの車は自分が慣れるまでの慣らし運転として
慎重に慎重を期して乗るのが最低限のマナーであり、
車の性能を確認するかのような急加速・急ハンドル・急ブレーキ等は論外です。

そんな事をして、ガードレールや他の車輌等に追突すれば物理的に大破して
折角の車を早々に手放す事になりかねませんし、人身事故になれば
車云々の話では済まなくなります。

そういう訳で、車の寿命延長を前提とした慣らしは不要だが
乗り手が車に慣れる為の慣らしは必要です。