さて、今回は今迄全くと言って良い程、触れなかった
ディーゼルエンジンについて話をさせて頂こうと思います。

何で今迄触れなかったのか?と言うと一般の乗用車でのニーズで
ディーゼルエンジンを搭載した自動車は圧倒的に少なく
殆どが商用に用いられているのが日本の現状です。

東京都知事の派手なパフォーマンスでディーゼルエンジンは
排ガスと一緒に真っ黒な粒子状物質をバラ撒いて走る粗悪なエンジンだ!
あんな物、環境の大敵だ!等という風潮が蔓延してしまったように思うのですが
大きな誤解でアレは整備不良や粗悪燃料を入れた為に起こる現象で
諸悪の根源は状況を認知せず使っている無頓着な所有者です。

実際に欧州ではディーゼル乗用車は市販車売上げの半分を占める程に
為っており二酸化炭素の排出量もガソリン車に比べて20〜30%も
削減でき、熱効率が非常に良いので燃費向上も図れます。

ただ、都知事の指摘する粒子状物質や窒素酸化物の排出は
今後益々厳しい規制が導入されます。

そこで、添加剤業者として着目した点は現在添加剤に含有されている成分が
件の粒子状物質や窒素酸化物を除去・無害化する排ガス後処理装置
(一般的に言われる触媒)に対する影響という物があります。

亜鉛とモリブデン(両方とも弊社のマッハ1に含有されている)
の項でどちらも触れていますが亜鉛(ZnDTP)は成分中にリンを含み
排出ガス浄化に用いられる触媒に対して触媒被毒の作用を持っております。

また、モリブデン(MoDTC)は上記の亜鉛に対して
非常に有益な相乗効果を発揮するので優れた素材なのですが
金属や硫黄を含有しているので上記亜鉛と同じく
触媒に悪影響を及ぼす懸念があります。

勿論、弊社では既に上記の作用については承知しておりますので
問題が無いレベルまで対応を講じて販売しておりますが
この二つの成分の項でも触れましたが燃料・オイルに関して
現在は硫黄・リンを低減する方向で業界が動いております。
サルファーフリーとか低SAPS化と言う言葉を聞いた事が無いでしょうか?

ただ、闇雲に上記の成分を削減すれば清浄性、耐摩耗性、酸化安定性等の
エンジンに必要な性能を低下させる為、成分の最適化や
代替成分の研究が行われております。

弊社製品もオイルに関連する事業の性質上この流れに対応するべく行動しており
ZnDTPの成分最適化のレベルは技術的に限界の域に達していると判断し
代替成分を模索すると言う結論に至りました。

断っておきますが弊社の技術レベルでの話ではなく業界全般での話ですよ。
我々のような一企業が成分に手を加えようとすると
化学プラントを建てたり技術者を多量に雇用したりとそれだけで大赤字です。

病院の薬局と同じで薬を処方するのに成分を合成する処から始めるのではなく
既存の成分を組み合わせて処方する訳です。
それで如何に安価で効果を望める物を作るかと言う点が調合の妙という物です。

ここが開発陣の腕の見せ所で、面白くて、やり甲斐が大きくて、難しくて、
金と時間が掛かって、面倒でイライラして、全然思うように事が運ばない処です。

まぁ、そんな話はさておき、無い物を無理矢理作る為に四苦八苦するよりも
現状より優れた成分が有るならそれを使う方が早いし効率的だ。
と言う至極合理的な判断に至った訳です。

しかし代替成分は有りますが値段は現価格の3倍になります。
では話になりませんので現状の価格でユーザーである皆様に
提供出来るように折り合いを付けるのは私の仕事です。

調合の妙という面倒な所は開発陣にお任せして私は材料屋と
指がつりそうな勢いで電卓を叩きながら値段交渉をする訳です。

此処が営業の手腕発揮という所で、戦略的な駆け引きもあり面白いが、
相手と衝突ばかり起こして、遅々として話が進展せず、
材料屋からアンタとは商談出来ません。とサジを投げられる所です。

まぁ、そんな話はさておき、本題に戻りましょう。

もう一つの成分であるモリブデン(MoDTC)ですが
これは代替成分を探すという方法ではなく従来の添加剤の
組み合わせで今後の環境問題等々に対応出来ることが可能だと
言う結論に至りました。

これも、最強の組み合わせが見つかりました。値段は2倍になりました。
では全く話にならないので折り合いを付ける作業が必要になります。

日本ではプリウス等の電気を併用する自動車や
自動車メーカーが燃料電池を搭載したエコカーに
開発力を注いでいるという話をチラホラ聞きますので
ディーゼルエンジンが欧州のように半数を占めるまで
販売台数を伸ばすのは少し難しい気がしますが
ディーゼルエンジンは日本では商用ベースでは不可欠な存在ですし
これからも更なる開発が続くのは間違い有りません。

勿論、厳しくなる環境問題に対応する為に様々な技術の投入が
行われ、エンジンの他に燃料・オイルに対してもその要求は
厳しさを増すでしょう。

弊社でもその流れに当然対応すべく日々邁進していく次第です。

さて、最後になりましたが
誠に勝手ではありますが本号をもちましてオイル添加剤四方山話の
メルマガを一旦終了させて頂く事になりました。

理由は今号でも述べたとおり業界が一つの大きな過渡期を迎えている為
業務が多忙を極めておりメルマガの続行が不可能に為りつつあります。

約5年間、皆様にダラダラと好き放題書き連ねてきて
読者の方々からの様々な御意見や叱咤激励を頂き
大きく成長させて頂いた事を心より感謝しています。

また業務が一段落付いた時点で再開しようと考えていますので
その時は宜しければお付き合い頂ければ幸いです。

それでは、失礼いたします。